訃報(ヒラリー・ウォー)

警察小説の代名詞のようにいわれる作品のひとつ「失踪当時の服装は」の作者ヒラリー・ウォーが、12月8日コネティカット州トリントンの老人ホームで死亡。享年88。1940年代後半に作家デビュー、さまざまなシリーズを手がけたが、評価の高いのはフレッド・C・フェローズ署長が活躍する警察小説のシリーズで、「ながい眠り」、「事件当夜は雨」、「生まれながらの犠牲者」などがその代表作。日本では、ひと頃不遇をかこっていたが、10年ほど前に創元推理文庫で最後の作品と思われる「この町の誰かが」(1990)が久しぶりに紹介されたのをきかっけに、一気に再評価が進んだ。今後も、ハヤカワ・ミステリ収録作品の文庫化や、埋もれた秀作(がまだあるならそ)の発掘が望まれる。晩年は、所在不明と言われていたこともある。アメリカ探偵作家クラブ(MWA)では会長を務めた経歴もあって、1989年には巨匠賞を受賞している。