Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼/ブルース・A・エバンス(2007・米)

『Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼』は、実業家にして地元の名士、そんな仮面をかぶったシリアルキラーケビン・コスナーが演じる。いまさらながらのサイコキラーものだけれど、始まってしばらく観ていると、主演のコスナーが、製作まで手がけるご執心のわけが判ってくる。主人公にしか見えないもうひとりの自分をウィリアム・ハートが演じていて、コスナーに殺人を唆したり、けしかけたりするのだ。シリアルキラーの葛藤を対話形式で描くという斬新さと較べ、殺人現場をたまたま目撃した青年が、殺人の魅力に取り憑かれて、殺人者に犯行をせがむというストーリーはあまりぱっとしないけど、先の読めない展開とともに、ケビンを追いつめていく女刑事のデミ・ムーアの頑張りもあって、この手の作品としてはちょっとした拾いものに仕上がっている。なお、監督は「スタン ド・バイ・ミー」の脚本を手がけたブルース・A・エバンス。
[日本推理作家協会報2008年8月号]