スルース[探偵]/ケネス・ブラナー監督(2007・米)

猫も杓子もリメイクのご時世で、再映画化には食傷気味の昨今だが、さすがにこれは別格だろう。七二年にジョセフ・L・マンキウィッツ監督がアンソニーシェーファーの戯曲をもとにメガホンをとった作品を、ケネス・ブラナー監督がリメイクした『スルース』である。ロンドン郊外で暮らす売れっ子推理作家の邸 宅を、妻の愛人が訪問するというこの映画、旧作では推理作家をローレンス・オリビエ、愛人をマイケル・ケインが演じたが、今回はケインが作家にスライド し、若い愛人をジュード・ロウが演じる。話題は、そんなキャスティングに加えて、劇作家のハロルド・ピンターが脚本で参加していることで、自らカメオ出演 も果たしている。かつて、何度観ても何か見落としている気分にさせられたこの映画だけど、三十五年ぶりのリメイクで夫と愛人の対決がやけに呑みこみ易く感 じたのは、こちらが齢を重ねたせいか。
[日本推理作家協会報2008年5月号]