ルインズ 廃墟の奥へ/スコット・スミス(扶桑社海外文庫)

大評判になったデビュー作以来ずいぶんと音沙汰がなくて、一発屋とも、二作目のジンクスとも陰口を叩かれていたスコット・スミスだけれども、やっと新作が届けられた。前作からは十三年ぶりの『ルインズ 廃墟の奥へ』である。
バカンスでメキシコのユカタン半島を訪れた二組の若いアメリカ人のカップル。偶然親しくなったドイツ人観光客が、遺跡で発掘を手伝っている弟を迎えに行くと言い出したことから、軽い気持ちで四人もそれに同道することに。しかし、密林の奥へと分け入るに従って、一行は不安をつのらせていく。そんな彼らを待ち受けていたのは、思いもよらぬ事態だった。
こう来たか、スコット・スミス。一行を待ち受けるのは、実は設定としてはかなり?べた?で、露骨なスティーヴン・キング似がやや気になるけど、トラブルに巻き込まれた一行が次第に追いつめられていく過程からは、キリキリと締めつけるような緊張感が伝わってくる。不穏な空気を漂わせる冒頭から、スミスの上手さ炸裂で、予期せぬ災禍が押し寄せる中盤の展開へと、読者を一気に引き摺り込んでいく。この面白さなら「シンプル・プラン」の作者の名に恥じないし、読者も待った甲斐があるというものだ。
[本の雑誌2008年5月号]

ルインズ〈上〉―廃墟の奥へ (扶桑社ミステリー)

ルインズ〈上〉―廃墟の奥へ (扶桑社ミステリー)

ルインズ〈下〉―廃墟の奥へ (扶桑社ミステリー)

ルインズ〈下〉―廃墟の奥へ (扶桑社ミステリー)