紳士たちの遊戯/ジョアン・ハリス

ジョニー・デップ主演の映画「ショコラ」の原作者としてお馴染みのジョアン・ハリスが書いたミステリとして、エドガー賞にまでノミネートされたというのが『紳士たちの遊戯』である。伝統を誇る男子校セント=オズワルドに、新学期がやってきた。しかし、新任教師の中には、不満分子が紛れ込んでいるらしい。アレルギーの生徒を狙った悪質な悪戯、交通違反を密告された教師など、小さな事件が学園を陥れるスキャンダルへと発展していき、ついには生徒の失踪事件がもちあがる。
教師の仮面を被った犯人を暴くフーダニットの興味も去ることながら、犯人の回想として差し挟まれる偽りの学園生活や、生徒たちから変わらぬリスペクトを集める初老のベテラン教師など、グラマースクールを舞台にした学園小説としての面白さが素晴らしい。ただし、やや冗長なのが惜しまれるところ。それでも、教師と生徒の関係をめぐりさりげない感動を浮かび上がらせる幕切れまで結局引っぱられてしまう読み応えは、見事なのだが。
[本の雑誌2008年5月号]

紳士たちの遊戯 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

紳士たちの遊戯 (ハヤカワ・ミステリ文庫)