ハートシェイプト・ボックス/ジョー・ヒル(小学館文庫)

アメリカの新鋭ジョー・ヒルの『ハートシェイプト・ボックス』は、モダンホラー系としては本当に久々の収穫と呼びたい。メンバーが死に、人気を誇っていたバンドも数年前に解散。ぱっとしない日々を送るロック・ミュージシャンのジュードには、奇妙な蒐集癖があった。そんな彼が、ネットオークションで大枚千ドルを投じて落札した品。それは、幽霊が取り憑いたスーツだった。
と、ここまではありきたりのゴーストストーリーだが、スーツが手許に届き、次々と不可解な怪異現象に襲われ始めてからの展開に、底知れないストーリーテラーの力を感じる。幽霊スーツには因縁があり、主人公はある人物の罠におちたのだが、そのあたりを足がかりにして、物語はテンポを加速していく。曲中のインプロビゼーションの様相を呈する怪異現象、さらにエンディングに向けての盛り上がりも堂々たるもの。いやぁ、すごい新人が登場したものだ。ちなみに、この人、御大キングの息子さんらしいが、タイプはかなり違います。
[本の雑誌2008年2月号]

ハートシェイプト・ボックス〔小学館文庫〕

ハートシェイプト・ボックス〔小学館文庫〕