ハングリー・ラビット/ロジャー・ドナルドソン監督(2011・米)


相変わらずジェイソン・ステイサムと肩を並べる出演作の多さで、有り難味もインフレ気味のニコラス・ケイジだが、ベテランのロジャー・ドナルドソン監督による『ハングリー・ラビット』では、謎の自警団組織を向こうに回して、孤独な戦いを繰り広げる。妻のジャニュアリー・ジョーンズがレイプの被害に遭った晩、病院の待合室で見知らぬ男ガイ・ピアースが声を掛けてきた。ささやかな協力を見返りに、被害者に代わって被害者を処刑する正義の組織が、犯人の面倒を見てやるという。主人公はその誘いを一旦は撥ねのけるが、結局乗ってしまい、翌日レイプ犯は死体で見つかる。半年後のある日のこと、主人公のもとに小児性愛者を抹殺する手助けせよという命令の電話がかかってくる。
ニコラス・ケイジと自警団ものといえば、『キック・アス』が思い出されるが、本作は『見知らぬ乗客』でおなじみの巻き込まれ型の交換殺人テーマを絡めているところがミソ。謎の組織の正体に迫る一直線のサスペンスものと思いきや、脇役陣を絡めた捻りが加わるあたりがいい。思わず「一本!」と声を掛けたくなるクライマックスの後の背負い投げも見事に決まっている。
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日本推理作家協会報2012年8月号]