グッドナイト マイ・ダーリン/インゲル・フリマンソン(集英社文庫)

〈ミレニアム三部作〉で世界の注目を集めるスウェーデンから、またも届けられた夏向きの一冊を。スウェーデン推理アカデミーが選ぶ年間最優秀長編にも選ばれたインゲル・フリマンソンの『グッドナイト マイ・ダーリン』は、〈悪女ジュスティーヌ〉という連作のパート1にあたる作品で、北欧の冷たい空気に包まれた哀しい犯罪小説である。
両親に先立たれたヒロインは、四十五歳になった今も、湖畔の生家で暮していた。しかしやっと見つけた生涯の伴侶との旅は、散々な結果に終わってしまう。傷心を抱えて帰宅したそんな彼女のもとに、少女時代の苛めを懺悔したいという昔のクラスメートが訪ねてくる。めまぐるしく替わる語り手、カードのようにシャッフルされる過去と現在。ジグソーパズルのスリルと面白さに酔い、戦慄の物語の冷気に心底震えてほしい。
[波2011年8月号]

グッドナイト マイ・ダーリン 悪女ジュスティーヌ 1 (集英社文庫)

グッドナイト マイ・ダーリン 悪女ジュスティーヌ 1 (集英社文庫)