2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

崖っぷちの男/アスガー・レス監督(2012・米)

付けも付けたりという『崖っぷちの男』というタイトルだが、マンハッタンにある老舗ホテルの二十一階がその舞台となる。その朝チェックインした謎の男サム・ワーシントンは、食事を終えるや窓の外に立ち、そばに来たら飛び降りるぞと宣言する。野次馬や警官…

失脚/巫女の死/フリードリヒ・デュレンマット(光文社古典新訳文庫)

ドイツ語圏を代表するスイスの作家、フリードリヒ・デュレンマットを最初に読んだのは、『嫌疑』でもなければ『約束』でもない。大学時代の第二外国語のテキストだった。辞書を引き引き読んだ戯曲『物理学者たち』の無類の面白さに感動し、この作家をもっと…

ハングリー・ラビット/ロジャー・ドナルドソン監督(2011・米)

相変わらずジェイソン・ステイサムと肩を並べる出演作の多さで、有り難味もインフレ気味のニコラス・ケイジだが、ベテランのロジャー・ドナルドソン監督による『ハングリー・ラビット』では、謎の自警団組織を向こうに回して、孤独な戦いを繰り広げる。妻の…

深い疵/ネレ・ノイハウス(創元推理文庫)

ホロコーストという悲劇を生んだナチズムの禍根は、本国ドイツの現代ミステリでも依然主題としての重さを失っていない。新鋭の女性作家ネレ・ノイハウスの『深い疵』は、冒頭アメリカ大統領の顧問まで務めたユダヤ人が射殺され、ナチス親衛隊という彼の知ら…

ブラック・ブレッド/アグスティー・ビジャロンガ監督(2010・西)

アルモドバルの『私が、生きる肌』を押しのけてのアカデミー賞ノミネートが話題になったアグスティー・ビジャロンガ監督の『ブラック・ブレッド』は、フランコ政権による弾圧下にあった一九四○年代のカタローニャ地方を舞台にしている。少年は、ある日森の奥…