2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧
ごく一部の作品を除けばマイクル・コナリーの作品は主要な登場人物を介して繋がり、一大サーガのようなものを形作っているが、リンカーン弁護士ことミッキー・ハラーもそんなキーパーソンの一人だ。『真鍮の評決』では、そのハラーとハリー・ボッシュとの意…
『青チョークの男』以来ほぼ六年ぶりの翻訳紹介となるフランスの才媛フレッド・ヴァルガスの『裏返しの男』である。作者には、もうひとつ〈三聖人シリーズ〉があるが、本作は現在も書き続けられているパリ第五区警察署長アダムスベルグ警視シリーズの第二作…
ロジャー・コーマンに見いだされ、ニューシネマのカルト的な名作として今に伝わるロードムービー『断絶』(71)を世に送ったモンテ・ヘルマン。しかし、話題にはなったものの興行的には失敗し、その後、表の世界からフェイドアウトしたかに思われていたが(…
アカデミー賞の外国語映画賞部門にもノミネート、先頃発表された〈キネマ旬報〉の二○一一年ベストテンでは堂々のランクイン(九位)を果たしたカナダ出身のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『灼熱の魂』は、内乱の嵐が吹き荒れる中東某国を舞台にした、地獄めぐり…
たった一作がミステリの歴史を変えてしまうことがある。トマス・ハリスの『羊たちの沈黙(上・下)』(新潮文庫)もそんなひとつだ。ジョディ・フォスターが初々しい見習い捜査官を、アンソニー・ホプキンスが毒々しくハンニバル・レクター博士役を演じた映…
ジル・パケ=ブレネール監督の『サラの鍵』は、悪夢のような現実に翻弄されながら、それでも逞しく生き抜こうとするヒロインの姿を浮かびあがらせる。一九四二年夏のパリ、ドイツ軍の侵攻で自国の政府によるユダヤ人の一斉検挙が行われたその朝のこと、一家…
そのままでは難しかろうと勝手に心配していた邦題が「裏切りのサーカス」に決まったという『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の映画化。ジョン・ル・カレの読者からは非難轟々だったとも聞くが、配給会社の担当者の苦労もしのばれる命名は悪くな…
二年前に驚きのデビュー作『螺旋』でわが国の読書界を湧かせたスペインの作家サンティアーゴ・パハーレスが帰ってきた。最新作『キャンバス』である。 天才画家のエルネストを父親に持った息子のフアン。自分も画家を志すものの挫折し、今は父の作品の管理を…