2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

溺れる白鳥/ベンジャミン・ブラック(RHブックスプラス)

ミステリという狭い括りの中でばかり本を読んでいると、ミステリといえども小説である、という当り前のことをややもすると忘れてしまう。ベンジャミン・ブラック(ブッカー賞作家ジョン・バンヴィルの別名)の『ダブリンで死んだ娘』は、そんなわたしのよう…

探偵稼業は運しだい/レジナルド・ヒル(PHP文芸文庫)

レジナルド・ヒルは、ちょっと前にダルジールものの『午前零時のフーガ』で、老いて益々盛んなところを日本の読者に見せつけたばかりだが、『探偵稼業は運しだい』はシリーズの最初の二作が紹介されたきり長らくご無沙汰だった私立探偵ジョー・シックススミ…

野兎を悼む春/アン・クリーヴス(創元推理文庫)

舞台のシェトランド諸島は英国の一部だし、作者のアン・クリーヴスも歴とした英国作家だ。しかし、彼女の名を広くミステリ界に知らしめた〈シェトランド四重奏(ルビ:カルテット)〉は、どこか北欧の香りを湛えている。古くよりこのスコットランド北東沖の島…

アリス・クリードの失踪/J・ブレイクソン監督(2009・英)

イギリス出身の先達、クリストファー・ノーランやダニー・ボイルの才能に例えられてのデビューを果たしたのが、イングランドから登場したJ・ブレイクソンだ。英国産洞窟ホラーの続編『ディセント2』の共同脚本などで知られる人だが、自らのオリジナル脚本…

[〈映画〉]最後の賭け/クロード・シャブロル監督(1997・仏) フランス映画にもヌーベルバーグにも疎いわたしが、にわかにクロード・シャブロル贔屓を気取りたくなったのは、昨年の東京映画祭で観た遺作『刑事ベラミー』の素晴らしさに舌を巻いたからだ、と…

硝子の暗殺者/ジョー・ゴアズ(扶桑社海外文庫)

贔屓の作家の訃報に接する寂しさは、喩えようのないものだが、そんな読者の気持ちを少しでも癒してくれるものがあるとすれば、それは遺された作品だろう。本年一月に惜しまれて世を去ったジョー・ゴアズの『硝子の暗殺者』もそんな一冊だ。 ケニアの自然保護…

アウェイク/ジョビー・ハロルド監督(2007・米)

先の『キラー・インサイド・ミー』にも娼婦役で出演していたジェシカ・アルバが、今度は心臓疾患を抱える若き青年実業家ヘイデン・クリステンセンの秘書であり恋人の役を演じる『アウェイク』。結婚を望む若いカップルの間には、互いの身分違いを理由に反対…

グッドナイト マイ・ダーリン/インゲル・フリマンソン(集英社文庫)

〈ミレニアム三部作〉で世界の注目を集めるスウェーデンから、またも届けられた夏向きの一冊を。スウェーデン推理アカデミーが選ぶ年間最優秀長編にも選ばれたインゲル・フリマンソンの『グッドナイト マイ・ダーリン』は、〈悪女ジュスティーヌ〉という連作…