2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧

特捜部Q 檻の中の女/ユッシ・エーズラ・オールスン(ハヤカワ・ミステリ)

スカンジナビア三国の一角デンマークからの登場となるユッシ・エーズラ・オールスン(著者プロフィルに近影はないが、おそらくは男性作家)は九十年代後半にデビュー、本国を含むヨーロッパ諸国で人気を博している作家だが、警察小説の個性派『特捜部Q 檻の…

生、なお恐るべし/アーバン・ウェイト(新潮文庫)

アメリカ北西部のシアトルから新たな才能が登場した。その名をアーバン・ウェイト。まずは、彼のデビュー作『生、なお恐るべし』の内容をちらりと紹介してみたい。 カナダとの国境に近いワシントン州の森林地帯。前科のある運び屋ハントは、新米の若造ととも…

ファースター 怒りの銃弾/ジョージ・ティルマン・Jr監督(2010・米)

開巻一番、三人の主要な登場人物たちが、ただドライバー、刑事、殺し屋とだけ観客に紹介される。ドライバーことドウェイン・ジョンソンは、十年という刑期をつとめて出所したばかり。刑事ことビリー・ボブ・ソーントンは定年目前のベテラン捜査官。そして殺…

ピザマンの事件簿2 犯人捜しはつらいよ/L・T・フォークス(ヴィレッジブックス)

続編を待ちかねたL・T・フォークスの〈ピザマン〉シリーズだが、やっと『ピザマンの事件簿2 犯人捜しはつらいよ』が届けられた。酒のうえでの失敗から刑務所暮しを経験した主人公の中年男テリー。めでたく出所し、ピザの配達と大工という二束のわらじで仕…

紳士と月夜の晒し台/ジョージェット・ヘイヤー(創元推理文庫)

ジョージェット・ヘイヤーの名は、わが国でも数冊が訳されているロマンス小説の方面ではともかく、ミステリ・ファンの間では長らく語られることがなかった。しかし、昨年ほぼ時を同じくして紹介されたウォーターズの『エアーズ家の没落』とウォルトンの『英…

逃亡のガルヴェストン/ニック・ピゾラット(ハヤカワ・ミステリ)

そもそも時代の空気に敏感なミステリ叢書の老舗として鳴らしてきた〈ハヤカワ・ミステリ〉が、敢えて〈新世代作家紹介〉の看板を掲げた連続刊行の企画は、なかなかの成功を収めつつあるようだ。デイヴィッド・ゴードン(『二流小説家』)、ヨハン・テリオン…