2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

策謀の法廷[上下]/スティーヴ・マルティニ(扶桑社海外文庫)

わが国の読者に新作が届けられるのはなんと八年半ぶりというスティーヴ・マルティニだが、『策謀の法廷』はおなじみ弁護士ポール・マドリアニが、またもやめざましい活躍をみせる。 第一級謀殺の容疑で投獄されている依頼人のルイスは、二十年にわたる軍役を…

完全なる報復/F・ゲイリー・グレイ監督(2009・米)

司法取引の是非をめぐっては、日本でもさまざまな議論があるようだが、F・ゲイリー・グレイ監督の『完全なる報復』は、この罪と罰をめぐる取引の問題点に鋭く迫った作品だ。ジェラルド・バトラーは二人組の強盗に襲われ、妻と幼い娘を殺される。まもなく犯…

13時間前の未来(上・下)/リチャード・ドイッチ(新潮文庫)

過去の改変とタイムパラドックスを主題にした小説は数多いが、リチャード・ドイッチの『13時間前の未来(上・下)』(新潮文庫)は、無残にも殺された妻の死を回避しようと、時間を遡りながら真犯人をつきとめていく男の物語だ。濡れ衣を着せられ警察から取…

邪悪/ステファニー・ピントフ(ハヤカワミステリ文庫)

MWAが出版社のセント・マーティンズと共催した「ミナトーブックス・ミステリコンテスト」で第一席に選出されるや、その勢いでエドガー賞の最優秀新人賞にも輝いてしまったのが、ステファニー・ピントフの『邪悪』だ。一九○五年のニューヨーク近郊のドブソ…

矜持/ディック&フェリックス・フランシス(早川書房)

先に八十九歳で世を去ったディック・フランシスの名がクレジットされるおそらく最後の作品となる本作は、アフガンの戦地で右足を失った陸軍大尉トマス・フォーサイスが、負傷で帰宅休暇を命ぜられるところから始まる。やむなく折り合いの悪い母親のもとに身…