2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

暗闇の蝶/マーティン・ブース(新潮文庫)

都会の喧騒をはなれ、たおやかな時間が流れるイタリア中部の田舎町が舞台。本名はおろか、国籍すらも不明という初老の男がどこからともなくやって来て、この地に根を下ろした。蝶を専門に描く画家ということから、ミスター・バタフライの愛称で親しまれ、人…

白いリボン/ミヒャエル・ハネケ監督(2009・墺仏伊独)

去年ヨーロッパ映画賞で話題をさらい、4部門で受賞は果たしたのが、ドイツの鬼才ミヒャエル・ハネケの『白いリボン』だが、独特のアクの強さでは右に出るもののないハネケのこの話題作が、わが国でもやっと劇場公開の運びになったのは、実に喜ばしい。その…

荒涼の町/ジム・トンプスン(扶桑社海外文庫)

ここのところの地道な翻訳紹介によって、犯罪小説の巨匠ジム・トンプスンの全貌が明らかになりつつあるのは嬉しいことだ。新訳の『荒涼の町』は、なんと「おれの中の殺し屋」の問題の人物ルー・フォードが、再び読者の前に登場する。 テキサスの田舎町に、前…

深夜のベルボーイ/ジム・トンプスン(扶桑社)

かつてはスティーヴ・マックイン主演の映画の原作として刊行された「ゲッタウェイ」と「内なる殺人者」くらいしか読めなかったジム・トンプスンだが、ここのところぽつりぽつりと翻訳も増え、ようやくこの伝説の作家から幻という謎めいたベールが剥がれつつ…

失われた男/ジム・トンプスン(扶桑社海外文庫)

ジム・トンプスンの「死ぬほどいい女」は、「内なる殺人者」(「おれの中の殺し屋」)とは別の意味でトンプスンという作家の代表作だと思っているが、『失われた男』もそれと同年の一九五四年に上梓されている。 主人公のブラウニーは、アルコールに溺れる日…