2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

黒竜江から来た警部/サイモン・ルイス(RHブックスプラス)

ウェールズ出身というサイモン・ルイスだが、本邦初紹介となる『黒竜江から来た警部』は、中国に詳しいというトラベルライターとしての彼のキャリアが下地になっているに違いない。主人公のマー・ジエンは、中国の七台河市公安局に籍をおく警部だが、ある時…

新幹線大爆破/ジョゼフ・ランス&加藤阿礼(論創社)

東宝と東映の両社が、ほぼ時を同じくして新幹線を題材にした作品を製作したのは、もう三十五年も前のことだ。社会派のベクトルにやや傾いた清水一行原作の「動脈列島」よりも、当時全盛だったパニック、ディザスター映画の要素を基調に、クライム・サスペン…

陸軍士官学校の死/ルイス・ベイヤード(創元推理文庫)

ポオの生誕二百年からは一年が過ぎてしまったが、若き日の巨匠が登場する印象的な作品を。惜しくも受賞は逃したものの、CWAのヒストリカル・ダガー賞とMWAの最優秀長篇賞にもノミネートされたルイス・ベイヤードの『陸軍士官学校の死』である。 一八三…

ベルファストの12人の亡霊/スチュアート・ネヴィル(RHブックスプラス)

殺し屋を主人公にした物語なんか星の数ほど読んできたよ、というすれっからしの読者も、この作品には驚かされるのではないか。スチュアート・ネヴィルのデビュー作『ベルファストの12人の亡霊』の主人公フィーガンは、かつて凄腕の殺し屋としてIRAの仲間…

ソルト/フィリップ・ノイス監督(米・2010)

アンジェリーナ・ジョリーというと『トゥームレイダー』のララ・クロフト役を思い出す人も多いと思うが、そのスーパー・ヒロイン像のイメージそのままの彼女が再び登場するのが『ソルト』だ。アンジーの役どころは、CIAの女エージェント、イヴリン・ソル…

暗殺のハムレット(ファージング2)/ジョー・ウォルトン(創元推理文庫)

ファンタジーの分野から歴史改変テーマをひっさげミステリの世界へ堂々乗り込んできた世界幻想文学大賞作家ジョー・ウォルトンの〈ファージング〉三部作の『英雄たちの朝』に続くパート2は、『暗殺のハムレット』だ。前作のハンプシャー州の古い屋敷からロ…

催眠[上下]/ラーシュ・ケプレル(ハヤカワ文庫)

いまやマンケルやラーソンばかりじゃないミステリの新王国スウェーデンから、カミラ・レックバリに続き、またも頼もしい新人が登場。なんでも海の向こうじゃマンケルの別名義じゃないかって噂がたったというから(ただし作風は違う)、その実力は推して知る…

殺人犯/ロイ・チョウ監督(2009・香)

フーダニットをめぐって、久々に驚かされたのが、香港から登場したロイ・チョウ監督のデビュー作『殺人犯』だ。電気ドリルで被害者をめった刺しにする連続殺人犯を追う香港警察特捜班の刑事チェン・クアンタイが、犯人の手にかかって高層住宅の中庭に転落し…

ザ・ロード/ジョン・ヒルコート監督(2009・米)

映画の完成が遅れ気味で、伝わってくる情報といえば、ホラー映画サイト経由の殺伐とした画像ばかり。さらに、唯一の監督映画がバイオレンス・ウェスタン(「プロポジション-血の誓約-」)らしいことなど、完成前は不安がつのったけれど、アメリカ本国での評…