2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

オスカー・ワイルドとキャンドルライト殺人事件/ジャイルズ・ブランドレス(国書刊行会)

大英帝国の黄金時代にもあたるヴィクトリア朝のロンドンは、時代ミステリにとって恰好の舞台のようで、この春にガイ・リッチー監督の映画『シャーロック・ホームズ』で見た街のくすんだ佇まいとアクの強い熱気がまだ記憶に生々しく残っている。ジャイルズ・…

ぼくの名はチェット/スペンサー・クイン(東京創元社)

文庫に入ったポール・オースターの『ティンブクトゥ』と続けて読むと、ちょっとしたシンクロニシティーに頬が緩むこと間違いなしのスペンサー・クイン『ぼくの名はチェット』。主人公のチェットは体重四十キロあまりのミックス犬だが、試験につまづいて警察…

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を/ジョニー・トー監督(2009・香)

この人まで出演させてしまったのにはちょっと驚きました、フランスの国民的俳優(&歌手)ジョニー・アリディ。ヨーロッパでも評価の高いジョニー・トーならではの豪腕ぶりといっていいだろう。娘役のシルヴィー・テステューの起用ともども、喝采のキャステ…

説教師/カミラ・レックバリ(集英社文庫)

ラーソンの〈ミレニアム〉をめぐるお祭り騒ぎもさすがに一段落だが、三部作でスウェーデンのミステリに少しでも興味が湧いたなら、迷わずに読んでほしいのがカミラ・レックバリだ。海辺の小さな町を舞台に、伝記作家のエリカと警官のパトリックの主人公カッ…

ウディ・アレンの夢と犯罪/ウディ・アレン監督(2007・英)

スペインを舞台にした『それでも恋するバルセロナ』と日本公開の順序が逆になったが、『ウディ・アレンの夢と犯罪』は、『マッチポイント』に始まるロンドン三部作の掉尾を飾る作品。前作『タロットカード殺人事件』がミステリ映画として秀でていたこともあ…

ノンストップ!/サイモン・カーニック(文春文庫)

まさにそのタイトルが内容のすべてを言い当てているサイモン・カーニックの『ノンストップ!』は、久しく疎遠だった親友から突然かかってきた電話で幕をあける。その不可解な内容に首をかしげる間もなく主人公の平和な日常は暗転し、正体不明の集団に命を狙…

息もできない/ヤン・イクチュン監督(2009/韓)

アジアン・ムービーのショーケースともいうべき東京フィルメックスで、去年の最優秀作品賞に輝いたのが、この『息もできない』だ。俳優のヤン・イクチュンは、思い立ってこの脚本を3か月で書き上げたというが、さらに自らの監督、主演により本作を作り上げ…

シャッター アイランド/マーティン・スコセッシ監督(2010・米)

返金保証こそ付いていなかったが、原作は初紹介の折、結末部分を袋綴じで刊行されたことで話題になったデニス・ルヘイン作の映画化『シャッター アイランド』。ボストンの沖合いに浮かぶ小さな島には、犯罪者たちを収容する精神病院があった。連邦保安官のレ…