2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧
CWA賞レースで、スパイ・冒険・スリラー部門賞にあたるイアン・フレミング・スチール・ダガーを「チャイルド44」と争って惜しくも敗れた『犯罪小説家』だが、そんな世評の応援もあってか、作者のクレッグ・ハーウィッツ自らが第二のデビュー作と語る自信作の…
先に同じ叢書から刊行された二冊のラジオドラマ集は、落穂拾いどころか、クイーンの真髄に再びふれる作品揃いに嬉しい驚きを覚えたものだが、その成功を追い風に登場となったのが、このシナリオ・コレクションと思しい。飯城勇三編『ミステリの女王の冒険 視…
スペインという国籍とエンタテインメントとして型に嵌まらない面白さから、ふと数年前に紹介されたカルロス・ルイス・サフォンの「風の影」を思い起こしたりもする『螺旋』は、サンティアーゴ・パハーレスという新鋭の作家が、二十五歳の若さで書き上げた処…
読書好きにとって古書というテーマは、まさに猫に鰹節だが、ピュリッツァー賞作家であるジェラルディン・ブルックスの『古書の来歴』は、五百年前にスペインで作られたと伝わるユダヤ教の貴重な写本をめぐる物語である。民族紛争の深い爪あとが残るボスニア…
タイトルもそのものずばり、エイリアン・アブダクション(異星人による誘拐行為)を描く『THE 4TH KIND フォース・カインド』は、ナイジェリア人の血をひくオラトゥンデ・オスンサンミ監督のおそらくは初メガホン作品。不眠症患者や行方不明者多数、FBIの出…
劇作や映画の脚本で有名な双子、アンソニーとピーターのシェーファー兄弟には、二十代の若かりし頃に合作チームでミステリ小説に挑戦していた時代がある。期間も短く、長編もたった三作しか残ってないが、そのひとつ『衣裳戸棚の女』の妙に人を喰ったところ…
今年の年明け早々、アンジェイ・ワイダがまだ生きていたことに感心してしまった罰当たりな映画ファンのわたし。しかし、昨年末に日本の観客のもとに届けられた『カティンの森』は、今から三年前の御歳八十で撮った作品とのことだが、ちっとも年齢を感じさせ…
リチャード・マシスンの原作を「ドニー・ダーコ」のリチャード・ケリー監督が映画化した『運命のボタン』がいよいよ5月8日から公開されます。主演は、キャメロン・ディアス。すでに、同原作を表題作にしたマシスンの新編短篇集がハヤカワ文庫から刊行されて…
ジョージ・D・シューマンの『最後の吐息』は、盲目の超能力者シェリー・ムーア・シリーズの第二作にあたる。ヒロインのシェリーは、死者の手を握ることによって死に際の記憶を読み取ることが出来るが、その特殊な力を捜査当局から見込まれて、前作『18秒の…