2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

最終弁護/スコット・ブラット(ハヤカワミステリ文庫)

どっかで見たような邦題はちょっと頂けないが、(原題はAn Innocent Client)スコット・プラットの『最終弁護』は、法廷ものとして、いい具合に肩の力が抜けている。気持ちよくページをめくることができるという点で、ディヴィッド・ローゼンフェルトの「弁…

フェイクシティ ある男のルール/デヴィッド・エアー監督(2008・米)

クリント・イーストウッドが「チェンジリング」で克明に描いた悪の病巣はびこる二十年代ロサンジェルスは、やがてジェームズ・エルロイの描くそれと見事に繋がっていくわけだが、デヴィッド・エアー監督の『フェイクシティ ある男のルール』には、そのエルロ…

ジャマイカの迷宮/ボブ・モリス(講談社文庫)

フロリダの地を舞台にしたミステリには、なぜか心躍る作品が多いが、ボブ・モリスもその書き手のひとり。デビュー作でもあった前作「震える熱帯」でいきなりエドガー賞の新人賞候補になったが、同じシリーズ・キャラクターが再び登場する第二作の『ジャマイ…

死せる案山子の冒険−聴取者への挑戦(2)/エラリー・クイーン(論創社)

先頃刊行されたクイーンの「Xの悲劇」の新訳版は、訳文のリニューアルが古典のかび臭いイメージを払拭し、新しい読者の目を翻訳ミステリへと向けさせる好企画だったと思う。一方、昔ながらのクイーン・ファンが注目するのはこちら。昨年来、話題になってい…

チェンジリング/クリント・イーストウッド監督(2008・米)

『チェンジリング』は、喜寿を迎えながらも、話題作を次々と世に送り出しているクリント・イーストウッド監督(今も、すでに次の「グラン・トリノ」が公開され、ヒットしている)がJ・マイケル・ストラジンスキーの脚本を映画化した作品で、同題のカナダ産ホラ…

ニーナの記憶/ビル・フロイド(ハヤカワ文庫NV)

表紙の作者名より、帯に刷られた推薦者アイリス・ジョハンセンの名の方が目立つ本のつくりで、てっきりロマンス寄りだろうと思ってしまったビル・フロイドの『ニーナの記憶』。しかし、中身は意外にも連続殺人犯である夫に怯える妻を主人公にした骨の太いサ…

バリー・アイスラーのトークショー

初のノンシリーズ作品「フォールト・ライン/断たれた絆」の刊行を記念して、作家バリー・アイスラーの講演会が開催されます。多彩な過去のキャリアや創作の秘密のほかに、先の公開された映画「レイン・フォール/雨の牙」の撮影エピソードも聞けるかも。来…

ミレニアム2 火と戯れる女/スティーグ・ラーソン(早川書房)

スティーグ・ラーソンのミレニアム三部作待望のパート2『ミレニアム2 火と戯れる女』である。前作で異彩を放つヒロイン、ドラゴン・タトゥーの女ことリスベットのミステリアスな魅力に参った読者も多いと思うが、本作では彼女がひた隠しにしていた自身の過…

壊れた偶像/ジョン・ブラックバーン(論創社)

〈論創海外ミステリ〉がぽつりぽつりと紹介しているイギリスのジョン・ブラックバーンは、オカルト・スリラーの書き手としてややB級寄りと思われているフシがあるが、五十年代末の作品『壊れた偶像』(松本真一訳/論創社二○○○円)を読めば、ストーリーテラ…

都筑道夫「読ホリデイ」の続報

先に、「都筑道夫ポケミス全解説」の好評を受け、フリースタイルから「読ホリデイ」の単行本化が決まったニュースをお知らせしましたが、続報が入りました。当初、連載からセレクトしての抄録の予定が、すべてを収録することになった模様です。(ニュースソ…

エドガー賞に輝いたコリン・ファレル主演のクライムコメディ映画

エドガー賞の話題をもうひとつ。「バンク・ジョブ」、「バーン・アフター・リーディング」といったライバルたちを蹴落とし、最優秀映画賞を受賞したのはコリン・ファレルが殺し屋役を演じるクライムコメディ「In Bruges」。タイトル通り、ベルギーの古い都ブ…

今年のエドガー賞はC・J・ボックスの「ブルー・ヘヴン」

先にこのブログでもノミネート作品をお知らせしましたが、MWA(アメリカ探偵作家クラブ)が選ぶエドガー賞の今年の受賞者が決まりました。注目の最優秀長編賞は、C・J・ボックスの「ブルー・ヘヴン」でした。 ボックスは、ワイオミング州の猟区管理官ジョー…