2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

いよいよ出ます、ゲイマンの「アメリカン・ゴッズ」

快作「アナンシの血脈」、「グッド・オーメンズ」(テリー・プラチェットとの共著)の翻訳紹介、原作だけでなく製作の肩入れまでした映画「スター・ダスト」の公開まではとんとん拍子だったのに、長らくお預けを喰わされていたニール・ゲイマンの代表作と言…

アナンシの血脈/ニール・ゲイマン(角川書店)

売れに売れた「ダ・ヴィンチ・コード」に続く柳の下のどじょうを狙ったわけでもないのだろうが、帯に刷られた?ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー第一位獲得!?の惹句が賑々しい。おまけに、御大スティーヴン・キングに?熱烈に太鼓判!?とまで言われた日に…

グッド・オーメンズ/ニール・ゲイマン(角川書店)

先に「アナンシの血脈」が紹介されたニール・ゲイマンが、テリー・プラチェットと組んだ作品で、そのタイトルからも察せられるであろう、映画「オーメン」を下敷きに、ハルマゲドンをめぐるてんやわんやを描いたファンタスティックな物語である。 ヨハネの黙…

ナツメグの味/ジョンコリア(河出書房新社)

「炎のなかの絵」で、元祖〈異色作家短篇集〉でも、その要の存在だったジョン・コリア。生涯にわたり、六十余編のショートストーリーをものし、エドガー賞も受賞したことがあるこの作家の作品は、ミステリファンなら幻想と怪奇、奇妙な味系のアンソロジーな…

血と暴力の国/コーマック・マッカーシー(扶桑社海外文庫)

「ザ・ロード」の作者によるミステリへの越境作。全米図書賞に輝く「すべての美しい馬」がわが国でも知られるコーマック・マッカーシーの『血と暴力の国』は、麻薬密売人たちの同士討ちの現場にゆきあたった退役軍人モスが、二百万ドルを越える現金を持ち逃…

ザ・ロード/コーマック・マッカーシー(早川書房)

昨年の積み残しから。キングの『ザ・スタンド』が疫病の流行、マキャモンの『スワン・ソング』が核戦争の勃発と、小説の中で描かれる世界の終わり方も色々だが、コーマック・マッカーシーの『ザ・ロード』をひもとく読者も、最初は主人公親子の行く手に広が…

ルルージュ事件/エミール・ガボリオ(国書刊行会)

過去数回に渡り翻訳書が刊行され、ミステリ史の話になればコリンズの「月長石」とともに必ず話が及ぶエミール・ガボリオの『ルルージュ事件』だが、十九世紀のフランスで書かれたこのミステリの古典を実際に読んだ人は、これまでごく少数だったに違いない。…

プリーストリーの「夜の来訪者」が上演されます

ミステリ劇の古典的な名作「夜の来訪者」を、シス・カンパニーが紀伊國屋ホールの舞台にのせます。プリーストリーの戯曲が昨年岩波文庫で復活し、ミステリ・ファンの注目を集めるなど、絶妙のタイミングでの上演となります。 調べてみたところ、わたしは199…

門外不出 探偵家族の事件ファイル/リサ・ラッツ(SB文庫)

先に明らかにされた2009年のエドガー賞候補になったリサ・ラッツ。彼女のデビュー作がこれ。まるでホームコメディのような展開に、え、え、え?と思った読者も多いことと思うが、それを踏まえた後半の展開が実は最高なんです。 主人公のイザベラは、サンフラ…

今年のエドガー賞ノミネート作は

第63回目となるアメリカ探偵作家クラブ(MWA)が選ぶ2009年エドガー賞のノミネート作品が決まりました。最優秀長編賞部門の候補は、次の6作です。 Missing by Karin Alvtegen (Felony & Mayhem Press) Blue Heaven by C.J. Box (St. Martin’s Minotau…

アンドリュー・テイラー、今年のダイヤモンドダガー賞を受賞

英国推理作家協会(CWA)が、生涯を通して犯罪小説の発展に功績のあった作家に授けるダイヤモンドダガー賞の今年の受賞者に、アンドリュー・テイラーを選んだ。デビュー作の「危ない暗号」(ハヤカワミステリ刊)でジョン・クリーシー賞(新人賞)のほか、二度…

黒衣の処刑人/トム・ケイン(新潮文庫)

エンタテインメントの分野では新人の扱いだが、トム・ケインはジャーナリストとしての長い経験や映画の脚本を書いたこともある人のようで、なるほど『黒衣の処刑人』は、デビュー作でありながら、それら豊富なキャリアの裏打ちもあって、完成度高いエンタテ…

陰謀病棟/クリストフ・シュピールベルク(扶桑社海外文庫)

「朗読者」のベルンハルト・シュリンクや「ラジオ・キラー」のフランク・フィツェックなど、ドイツにも侮ることのできないミステリ作家はいるが、『陰謀病棟』のクリストフ・シュピールベルクもそのひとりかもしれない。二○○二年、ドイツの推理作家協会が選ぶ…

チャイルド44/トム・ロブ・スミス(新潮文庫)

おっと、今頃になってご紹介とは。リドリー・スコット監督による映画化も進行中という『チャイルド44』は、イギリスの新鋭トム・ロブ・スミスの処女作だ。しかし、新人とは思えぬ筆力で、ブッカー賞にまでノミネート(ロングリストのみだが)、スターリン治…

極限捜査/オレン・スタインハウアー(文春文庫)

2008年はトム・ロブ・スミスの「チャイルド44」やヘニング・マンケルの「タンゴステップ」など、二次大戦以降のヨーロッパの歴史の暗部に光をあてるような作品が目立ったが、きわめつけはこの作品かもしれない。ヨーロッパ在住のアメリカ作家、オレン・スタ…

光文社古典新訳文庫からマンシェットが

前にも、チェスタトンの新訳(「木曜日だった男-一つの悪夢-」)が出て、ミステリ・ファンをびっくりさせた光文社の古典新訳文庫から、な、な、なんと、J・P・マンシェットが出ています。中条省平訳の「愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える」で、以前岡…

犯罪王カームジン あるいは世界一の大ぼら吹き/ジェラルド・カーシュ(角川書店)

昨今の短編小説ブームの先駆けとなったジェラルド・カーシュは、先年本国でシリーズ全作が発掘され、それが一冊にまとめられた『犯罪王カームジン あるいは世界一の大ぼら吹き』が翻訳された。タイトルからも伺えるように、世紀の大犯罪者を名乗る人物がカー…

エグザイル/絆/ジョニー・トー監督(2006・香)

美しい妻と生まれて間もない赤ん坊が待つわが家に帰って来たニック・チョ ン。待ち受けるのは、ボスの命を受け裏切り者の彼を殺さなければならないアンソニー・ウォンとラム・シュの二人組。一方、友人のニックを守ろうとするフランシス・ンとロイ・チョンも…

ワイルド・バレット/ウェイン・クラマー監督(2006・米独)

劇場で予告編を観て、コレは絶対に面白いに違いない、と直感したのがこの『ワイルド・バレット』だ。監督のウェイン・クラマーはインディペンデント系の人だが、その斬新で大胆な映像表現にまず目を奪われる。しかし、タランティーノもかくやの視覚的に派手…

訃報(ドナルド・E・ウェストレイク)

年の瀬も押し迫った2008年12月31日、メキシコのサン・タンチョで休暇を過ごしていたドナルド・E・ウェストレイクが死亡。大晦日のディナーへと向う途中に、心臓発作を起こしたらしい。享年75。長編、短編、映画脚本の3部門でエドガー賞に輝き、1993年に…

今年もあります、「世界バカミス☆アワード!!」

昨年の第一回では、並みいる強豪の候補作を押しのけジェイムズ・グレイディの『狂犬は眠らない』(ハヤカワミステリ文庫刊)が栄誉に輝いた「バカミス☆アワード!!」。(グレイディ氏の寄せたコメントが、〈ミステリマガジン〉2008年6月号に掲載されていま…

「Xの悲劇」の新訳

もうすでにディープなミステリ好きの間ではかなりの話題になっているように、エラリー・クイーンの「Xの悲劇」の新訳が角川から出ます。訳者は、去年、パーシヴァル・ワイルドの「検死審問(インクェスト)」でも古典のいい雰囲気を大切にしながら、読みやす…

闘うベストテン2008、決まる

現在オンエア中ですが、ミステリチャンネル(スカパー!)の「闘うベストテン2008」が決まりました。海外部門の1位は、コーマック・マッカーシーの「ザ・ロード」でした。そのほか、ベストテンでどの作品が選ばれたかは、こちらをご覧あれ。ちなみに選者は、…

訃報(ヒラリー・ウォー)

警察小説の代名詞のようにいわれる作品のひとつ「失踪当時の服装は」の作者ヒラリー・ウォーが、12月8日コネティカット州トリントンの老人ホームで死亡。享年88。1940年代後半に作家デビュー、さまざまなシリーズを手がけたが、評価の高いのはフレッ…