2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

フロスト気質/R・D・ウィングフィールド(創元推理文庫)

一昨年に惜しまれて世を去ったR・D・ウィングフィールドが遺したフロスト警部シリーズの長編は、死後出版のものを合わせて六編あるが、この『フロスト気質』はその四作目にあたる。残された未紹介作品はわずか二作というのはちょっと寂しいが、初の上下巻…

千の嘘/ローラ・ウィルソン(創元推理文庫)

先に紹介されたアン・グリーヴスの『大鴉の啼く冬』は、極寒のシェトランド島という舞台の新鮮さとも相俟って好評だったようだが、ローラ・ウィルソンの『千の嘘』は同作と二○○六年のCWA最優秀長編賞を争って、惜しくも破れた作品。しかし、英ミステリの…

鎮魂歌は歌わない/ロノ・ウェイウェイオール(文春文庫)

ロノ・ウェイウェイオールという新鋭の『鎮魂歌は歌わない』は、娘を殺された主人公ワイリーが、無頼から足を洗って犯人への復讐を誓うという、シリーズの第一作として、あまりに「らしくない」幕開きにちょっと驚く。しかし、やがて友人や妻たちとのやりと…

フィクサー/トニー・ギルロイ監督(2007・米)

今年のエドガー賞における映画部門で、「ノーカントリー」などの強敵を抑えて栄冠を勝ちとったのがこの『フィクサー』だ。ジョージ・クルーニー演じる弁 護士のマイケル・クレイトンはニューヨークの大手法律事務所で働いているが、経営者から揉み消し専門の…

幻影師アイゼンハイム/ニール・バーガー監督(2006・米捷)

個人的に「プレステージ」は、去年公開されたミステリ映画の中では屈指の傑作のひとつだと思っているが、『幻影師アイゼンハイム』は、そのクリストファー・ノーランの作品を連想させる。すなわち、十九世紀の世紀末という時代設定、原作への大胆な脚色、そ…

譜めくりの女/ドゥニ・デルクール監督(2006・仏)

楽器演奏者の傍らで楽譜の頁をめくる助手を譜めくりという。この仕事は、単に楽譜が読めるだけではだめで、演奏中は演奏者とシンクロするほどの阿吽の呼吸が必要とされる。自らがヴィオラ奏者としても有名なドゥニ・デルクール監督の『譜めくりの女』は、ピ…